近藤 豊
国立極地研究所 国際北極環境研究センター 特任教授
東京大学 名誉教授、サイエンスアドバイザー
博士 理学(東京大学)
近藤 豊
国立極地研究所
国際北極環境研究センター 特任教授
東京大学 名誉教授
サイエンスアドバイザー
博士 理学(東京大学)
近藤 豊
国立極地研究所 国際北極環境研究センター 特任教授
東京大学 名誉教授、サイエンスアドバイザー
博士 理学(東京大学)
近藤 豊
国立極地研究所
国際北極環境研究センター 特任教授
東京大学 名誉教授
サイエンスアドバイザー
博士 理学(東京大学)
近藤 豊
国立極地研究所 特任教授、サイエンスアドバイザー、東京大学名誉教授
〒190-8518 東京都立川市緑町10-3
mail:kondo.yutaka@nipr.ac.jp
専門分野:地球大気環境科学
関連するweb site:https://researchmap.jp/ykondo
日本気象学会、日本地球電磁気・地球惑星圏学会、日本地球惑星科学連合、アメリカ地球物理学連合(AGU)
人間活動による地球規模での大気組成の変化が人類の生存環境としての気候と大気の質とに大きな影響を与えることが1980年頃より明らかになり、大気組成の変化を把握し、その変化や影響が生じる過程を解明する研究が急速に発展してきました。私は、この新しく生まれた「地球大気環境科学」と呼ぶべき分野の研究を継続的に行ってきました。私の研究の特徴は高精度測定の追及という観測の原点に一貫して足場を置き、国内外の共同研究プロジェクトを主導しながら、独自に開発した測定器により気球、航空機、地上観測を世界各地で実施したことです。それによって、大気中の微粒子(エアロゾル)、とりわけ炭素微粒子の実態を解明してその気候への影響を明らかにしたのをはじめ、成層圏オゾンの破壊メカニズム、対流圏オゾンを生成する化学過程の統一的理解など、この分野の重要課題の解明に貢献してきました。
オゾン分子O3は酸素原子Oが3つ結びついたものです。10-50km高度の大気中(成層圏)では太陽紫外線で大気中の酸素分子O2が分解されることでO3が作られ、オゾンが高濃度となります。このオゾン層は紫外線を吸収し、有害な太陽紫外線から生物を保護しています。そのオゾンが南極上空において、人為起源の塩素化合物等で化学的に破壊されることでオゾンホールが生じるということが1985年にイギリスの研究者により発見されました。窒素酸化物もオゾンを破壊する一方で、塩素化合物によるオゾン破壊を抑制します。このため、オゾンの化学過程の解明にはその高精度な測定が鍵です。普通の飛行機では成層圏の高度に達しないため、大型の気球に観測器を載せて、成層圏大気の組成を計測することが一般的でした。私は気球に載せられる一酸化窒素(NO)とそれを含む全窒素酸化物の高感度測定法をいち早く開発しました(写真1)。フランスで気球観測を多数回行い、そのデータから窒素酸化物がオゾンを壊す反応を詳しく調べ、エアロゾル(液体や固体の微粒子)が関与する反応が重要な役割をしていることを示しました。
南極オゾンホールの発見の後、北極域でも中緯度より大きなオゾン破壊が起きることが観測され、その物理・化学過程の解明が重要な課題となりました。北極域でのオゾン破壊の実態を解明するため、気球による国際共同観測を行ないました(写真2)。北極冬季の低温域で生成する氷粒子(写真3)に、窒素酸化物の主成分である硝酸が吸着・落下し濃度が低下していることを見出しまた。この結果、塩素化合物によるオゾン破壊への抑制が弱まり、小規模オゾンホールが成長することを示しました。これらの研究は、南極と異なる北極上空でのオゾン減少の過程の理解を大きく進展させました。
写真1 気球搭載用の窒素酸化物測定装置
写真2 スウェーデンのキルナにおける気球実験(小池真 博士撮影)
写真3 キルナ上空で生成した氷粒子からなる雲(真珠母雲と呼ばれる)。
この粒子の表面上でオゾン破壊を促進する化学反応が起きる(鳥山哲司氏撮影)
対流圏(高度0-10km)のオゾンは大きな温室効果をもつと同時に、高濃度になると生物に悪影響を及ぼします。成層圏とは異なり、対流圏のオゾンは大気汚染物質などの化学反応で生成され、その生成速度は窒素酸化物濃度により大きく支配されることが知られています。そこで私はNASAが1991年に太平洋域で実施した大型航空機観測計画に参加し、独自に開発した高精度の窒素酸化物測定器(写真4)による観測を実施しました。このプロジェクトにおいて私の測定データの高い信頼性が示されたことを契機に、NASAの航空機観測に幾度も参加を要請されることになりました(写真5)。観測で得られたデータから太平洋・大西洋において、窒素酸化物やオゾンの化学反応過程を初めて統一的に理解することができました。また、観測値とモデル計算値(化学反応と大気の運動を取り入れ、大気成分の濃度の分布をコンピューターで計算)との比較をすることで、モデル計算の精度を確認し、モデルによるオゾンの気候影響の推定の正しさを示しました。
写真4 NASAの航空機に搭載された窒素酸化物測定器(PEM West航空機観測)
写真5 大西洋域で行われたNASAのSONEX航空機観測
大気中には直径0.01ミクロンから10ミクロン程度の液体や固体の粒子が多数浮かんでおり、これらの粒子のことを「エアロゾル」と呼んでいます。1ミクロンは百万分の1メートルの長さのことです。PM2.5(直径が2.5ミクロンより小さいエアロゾル)という名称の方が聞き慣れているかもしれません。エアロゾルは人間の呼吸を通して体内に入るため、健康に悪影響を及ぼします。さらにエアロゾルは地球の気候にも大きな影響を与えることが知られています。
飛行機から下にある雲を見ると白く輝いて見えます。これは雲粒(直径10ミクロン程度の水滴)によって太陽光がいろいろな方向に向きを変え、その一部が飛行機に向かうため、搭乗者に光が届き、白く輝いて見えるのです。つまり、雲粒子で太陽光が「散乱」されるのです。これと同じように、大気中のエアロゾルにより太陽光が地表に届く前に、その一部が散乱され、宇宙空間に戻ります。この結果、地表を暖める太陽光のエネルギーが減少し、地球はそのぶん冷えることになります。エアロゾルの中には黄砂のような土壌から発生するものや、海の波しぶきから生成する海塩粒子など自然起源のものがあります。これらの粒子は一般に1ミクロンよりも大きなものです。一方、人間活動から出る二酸化硫黄が化学反応してできる硫酸は、1ミクロンよりも小さなエアロゾルの主成分で(写真6)、光を散乱するため、空気中に存在すると私たちには「白く」見えます。光化学スモッグの時の空が白っぽくみえるのはこのためです。これらの白いエアロゾルは地球表面が受け取る太陽光のエネルギーを減らすために、地球の気候に影響します。実際に、大きな火山噴火が起こると、地球の平均温度が2-3年間低くなることが知られています。これは噴煙に含まれる二酸化硫黄が20kmの成層圏へ大量に運ばれ、そこで硫酸エアロゾルが生成された結果、地表に届く太陽光が弱まったためです。
写真6 エアロゾル粒子の電子顕微鏡写真(足立光司博士提供)
左:硫酸エアロゾル、右:ブラックカーボン
また、硫酸エアロゾルのような水に溶ける性質のあるエアロゾルは、空気が上昇し、湿度が100%を超えると水を吸って雲粒に成長します(図1)。エアロゾルの数によって雲粒の数や大きさが変わり、雲の太陽光を反射する効率も変わります。さらに、雲量(雲のしめる面積割合)も変化する可能性があります。雲の反射効率や雲量は地球が受け取る太陽エネルギーに大きく影響するため、エアロゾルは雲の性質を変えることでも、気候に大きな影響を与えると考えられています。
図1 上昇する空気に含まれているエアロゾルが水を吸って雲粒ができる(竹川暢之博士作成)
大気中には「白い」エアロゾルだけでなく、太陽光をよく吸収する「黒い」エアロゾルもあります。この中で最も重要なものは、炭素から形成される黒色の「煤(すす)」あるいは「ブラックカーボン」です(写真7)。これらの黒い粒子は太陽光を吸収し、大気を暖める作用があります。粒子の組成が炭素なので「カーボン」と呼ばれています。ブラックカーボンは炭素でできた燃料(石油、石炭、薪など)が燃えたときや、森林火災で発生します。トラックなどのディーゼルエンジンの車の排気ガスが黒っぽく見えたりするのは、排気ガスにブラックカーボンが含まれているからです。ブラックカーボンは地球上のいたるところで発生し、風に乗って北極までも運ばれます。
北極の気温は、地球全体の平均気温よりも早いペースで温暖化しています。この北極温暖化の原因のひとつとしてブラックカーボンが注目されています。北極に運ばれたブラックカーボンが雪や氷の上に積もるとその表面が黒くなります。太陽が当たり始める春には太陽光を吸収し、雪や氷がより速く融けると考えられています。ブラックカーボンが北極温暖化にどのくらい重要な役割を果たしているのかを理解するためには、北極大気中や積雪中の濃度を調べる必要があります。ところがブラックカーボンの測定は難しいため、これまで正確な測定が十分に行われてきませんでした。
東京大学の研究者と共同で、世界でも最先端のブラックカーボンの観測装置SP2を開発し(写真7)、北極や中緯度での地上観測や、航空機を用いた観測を行ってきました。またブラックカーボンを長期間観測するために光吸収を利用した装置COSMOS(写真8)も開発し、ノルウェー、アメリカ、カナダ、ロシア、ドイツ、デンマーク、フィンランドなどの研究者と協力して広域における観測を行い、北極でのブラックカーボンの実態を明らかにしつつあります(写真9、図2)。
写真7 レーザーを用いたブラックカーボン測定器(single particle soot photometer; SP2)
写真8 光吸収を利用したブラックカーボン測定器(continuous soot monitor system; COSMOS)
写真9 ノルウェーのスピッツベルゲン島ニーオルスンのツェッペリン山頂の大気観測所
図2 北極海を取り囲むようにCOSMOSを設置し、ブラックカーボンを連続的に測定している
地球温暖化には二酸化炭素などの温室効果気体の影響が大きく、これらの排出量を減らしていく必要があります。二酸化炭素は海で吸収されることも知られていますが、吸収されるのに100年以上かかるため、その対策は早急に進めなければなりません。
一方、エアロゾルは雨によって大気中から1週間程度で除去されるので、発生を抑えるとその効果が短期間に現れます。大気中には白いエアロゾルと黒いブラックカーボンが混じって浮かんでいます。現状では、白いエアロゾルの方が多いため、エアロゾル全体としては地球を冷やしています。ブラックカーボンの排出量を減らすことで、温暖化の進行を抑えられる可能性があり、多くの研究が行われています。
様々な所から発生するエアロゾルは大気と共に地球全体を巡っていきます。複雑なエアロゾルの効果を理解するために精度の高い観測装置を用いて地球規模での観測をし、エアロゾルの気候への影響をコンピューターで計算するなど、新たな研究が日々行われています。このように、地球の気候変動を理解するのには、数学、物理学、化学などの知識が重要です。こういった学問を使いながら、実際の自然現象を調べることは大変楽しいことです。またそのことで科学者は地球や人類の将来に深く関わることになるのです。
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アラスカにおけるブラックカーボンの湿性沈着の季節変化
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北極の雪氷面にブラックカーボン(BC)が沈着することにより、雪氷面の太陽光反射率が低下し、雪氷の融解を速めると考えられています。このことを詳しく調べるためには、降水中に含まれるBC濃度の正確な測定が必要です。しかし、これまでこのような観測はほとんどなく、この効果の定量的な推定が困難でした。Mori et al.(2020)はアラスカのバロー観測所(北緯71.3度)で2013-2017年の間、大気と中と降水中のBC濃度の観測を行い、その季節変化を初めて観測しました。夏は森林火災の影響で下層大気中のBC濃度が高くなると考えられ、また降水量も多くなります。このため年間のBCの沈着の約50%は夏の3か月間に起きることが分かりました。また大気・降水中のBC濃度を2つの気候モデルで計算しました。このモデルは観測されたBCの季節変化を比較的良く再現できました。また夏の高濃度BCは森林火災に起因することも示しました。このように、高精度の観測により、気候モデルの計算をチェックすることは、エアロゾルの気候影響をモデルで推定するための、重要な一歩です。